こだわった場所がずれている?「モンスターハンターワイルズ」 レビュー

2024年3月には20周年を迎え、PS4など旧ハードへの対応なしで、PS5、Xbox、PCとクロスプレイかつ全世界同時発売となった『モンスターハンターワイルズ』のレビューです。

初心者にもかなり配慮されたアクション

シリーズとしてかなり作品を重ねてきた一方、世界的にはほぼ前作『モンスターハンターワールド』からのスタートと言ってもいい状況で、本作はかなり初心者にも配慮されたアクションになっているという印象です。

その筆頭が「集中モード」と傷という概念です。
一定ダメージを与えるなどでモンスターに傷がついて赤く発光し(青く光る場合もあるが)、そこを「集中モード」で攻撃すると大ダメージを与えられるなど高い効果のある新アクションです。
爽快だし、評価できるポイントだと思います。

ただし、アクション面では、従来作と武器種に変化もなく、細かな調整や変化はあるものの、大きな変化はありません。
これはシリーズを重ねてきた作品のメリットでもあり、デメリットでもある部分といえます。

難易度としての評価は難しい部分です。
本作では簡単になったと感じる人が多いようですが、それは過去作でかなりプレイしてきたからこそ比較できる部分で広く新規プレイヤーに訴求したいとなると、どうしても調整を考えないといけなくなります。
過去作からのプレイヤーだけ意識すれば、より挑戦しがいのある調整は簡単だと思いますが、そうやって先鋭化していくのは新規プレイヤー排除と紙一重の状況です。

ストーリー進行に大きな変化が入ったが・・・

従来作品から大きな変化となった点がストーリー進行です。

従来作品では、ストーリー進行も、全てクエストを受注し拠点から出発して目的地に向かうという流れだったのが、本作は、よりシームレスにカットシーンなどから進行するようになっています。
現代のゲームの基準としては、ようやく追いついた感がある程度で特に評価するべき変化ではないです。

肝心のストーリー自体が高く評価できるようなものでなく、内容の規模感含め平凡という印象です。
過去作との多少の繋がりがあるようで、シリーズを遊んできたプレイヤーにとっては、感じるものもあるのかもしれません。

気になったのは、いわゆるエンディングに相当するスタッフロールの流れる場所でなんだか違和感を感じる箇所でのエンディングロールとなっています。

オープンワールドの意味のなさ

本作は一応オープンワールドなのですが、あまり効果的に機能しているとは言い難いです。

まず、本作のオープンワールド構造が平面的な広がりというよりは、上下の階層的な広がりというべき構造になっており、非常に複雑でわかりにくいです。

マップ画面。よく見ると暗いエリアが確認できるが、そこが他階層扱いになっている箇所。ただし、あくまでもマップ画面上の表現

騎乗マウントとなる『セクレト』がオートで移動してくれるのでプレイヤーがその構造を覚えにくくなっているとも言えるとも思います。逆に『セクレト』のみが通れる道なども存在するため、オートがないとやってられないという感じも受けます。

また、ストーリー進行でも、カットシーンの後、自動でそれなりに近いポイントに移動してしまうというのもあり、オープンワールドをうまく活かせていないという印象です。

「破綻」と言ってもいいレベルの酷いUI

悪い意味で過去作を引きずってしまった感のあるUIについては、破綻していると言ってもいいぐらいの酷さです。

メニューや設定もわかりづらく、過去作からプレイヤーしてきたユーザーと新規ユーザーの両方に配慮するあまりにわかりづらくなっているアイテム周りなど、とにかく整理がされてなく、過去作を引きずり過ぎな印象です。

現代的な基準から言えばアイコンの使い方も間違っていると感じ、操作体系含め刷新してもいい部分だったと感じます。

鍛冶屋で防具作成の画面。シリーズ伝統と言えばそれまでだが、同じアイコン並べられても数が多いだけに意味がない。

エンドコンテンツがあるのかないのか

エンドコンテンツに相当するものが、発売の時点では正直見当たりませんでした。

おそらく『アーティア武器』が一つ、エンドに相当する要素だと思いますが、性能的にもフロー的にもプレイヤーにうまく訴求できていない感があります。

他にエンドコンテンツに相当する部分が見当たらなく、この点が本作がボリューム不足と言われることに繋がっているのではと感じる部分です。

環境や食事にこだわるのもいいけど・・・まとめ

本作では、開発が生態系など環境表現や食事の質感にこだわったとかなりプッシュしている感があるのですが、重要ではないと思いません。ただし、最もプレイヤーが必要としているエンドコンテンツとしての「狩り」が薄いのでは意味がありません。
また、せっかくそこに拘ったのなら、サブクエなどでうまくエンドや「狩り」と
つながられるものは用意できなかったのかと感じます。

全体的に過去作に囚われて、大きな変化ができなかった作品という印象です。
(変化させた箇所は失敗。仕様の落とし込み不足と感じます。)

今後のアップデートでエンドコンテンツに相当するものは追加されていくかとは思いますが、そこに付き合ってくれるプレイヤーは少なくなる一方なので、やはり発売時点でのエンドコンテンツ不足はちょっと厳しいかなと思います。

また、最適化不足もマイナス評価と言える部分で、カプコンとしてREエンジンとして、『ドラゴンズドグマ2』に続けて同じことを繰り返しているのはシンプルに残念に感じます。