ゲームとしてのシンプルな評価は良作と言える『ドラゴンエイジ: ヴェイルの守護者』レビュー
いろいろな意味での話題作となってしまった「ドラゴンエイジ: ヴェイルの守護者」レビューです。
前作「ドラゴンエイジ:インクイジション」から10年経過して待望の続編となります。
開発は「ドラゴンエイジ」シリーズや「マスエフェクト」シリーズ、そして「Anthem」のBioWareです。
ストーリー
前作「ドラゴンエイジ:インクイジション」のDLCから完全に続いているため、全作未プレイヤーや10年という歳月でほとんど忘れてしまっているプレイヤーにとってはマイナスと言えるかもしれません。
世界観や各勢力などの説明も特になく、基本的にはゲーム内コーデックスを読んでというスタイルです。
本作「ドラゴンエイジ: ヴェイルの守護者」では新たな舞台(前作の北部の模様)や新たな主人公を据えています。
冒頭で、すでに仲間と出会って共に行動しているという状態で、関係性がわかりにくいのが少々残念ですが、一応ゲーム内台詞などで軽く補足されてはいます。
ストーリー全体としては非常に分厚く、高評価と言っても問題ないレベルだと思います。
問題はその配分とメインストーリーの中身と言えます。
メインストーリーは、前作にも登場した実は神様だった『ソラス』を止めるために起こしてしまった事態の解決に奔走するということなのですが、よくよくその中身を見てみるとただの精神論というか、今作で同行することとなる各コンパニオンキャラクターそれぞれが所属する国・勢力などで起きている出来事の影響もあって集中できていない状況、最後には各コンパニオンが所属する勢力の力を結集して解決という流れです。この各コンパニオンごとの解決がサブクエになっているため、むしろメインよりサブの方が濃く長いコンテンツとなっています。
本作は一応、マルチエンディングなので、サブクエの進行が最終的に影響するということのようです。
シンプルにメインストーリーだけを見てしまうとかなり弱く見えてしまいますが、各コンパニオンのサブクエは非常に魅力的でプレイしないプレイヤーはいないと思うので、その点問題ないのかもしれません。
刷新された戦闘システム
本作の戦闘は、かなりアクション寄りというかほぼアクションとなってしまっています。
従来作の戦術的な部分はほぼ完全に排除された形となり、操作するのは主人公のみでパーティー人数も主人公含めた3人となりました。
仲間は攻撃対象やスキルの使用を指示できる程度で一応オートで戦闘してくれるます。また、仲間の体力などは気にする必要がなく、スキルのリキャストとその攻撃対象に注目しておくという仕様で、これは本作がアクション重視である点から来ている仕様だと思います。
気になるのは敵の行動が基本的にプレイヤーを攻撃ターゲットとするため、乱戦というか攻撃が集中しがちで敵同士の行動に連係が感じられないため、ボスや雑魚の近接・範囲攻撃に加えて遠距離攻撃も多数飛んでくるなど、バランス取る気ないと感じる場面も見られます。
もうちょっと「ドラゴンエイジ」シリーズを感じさせる形にしてほしかったと感じてしまいます。
ただし、戦闘がつまらないということはなく十分及第点と言えます。
オープンワールドではなくなったマップとアイテム関連
本作はオープンワールドではなくなりました。
ただし、体感かなり広く感じます。基本的にはメイン・サブクエの進行に伴ってエリアが開放され行く流れで各所にアイテムなどが落ちており、進行にはちょっとした謎解きぽいものもあります。
構造的にはFF16が近いと言えます。
少々わかりにくいのは装備周りの仕組みでしょうか。
基本的には同じアイテムを取得するとアイテムがアップデートされていく形と、他に拠点となる灯台にいるキャラクターによる別のベクトルでの強化という形になっています。ゲーム内説明があったかも覚えてないぐらいなのでもうちょっと説明必要だったのではと感じます。
DEI関連について
そもそも前作「ドラゴンエイジ:インクイジション」の時点で同性愛者や種族によるロマンス対象の可否などがあったので、何も特別に開発側から目立つ主張をする必要もなかったのではと感じます。
また、世界観にプレイヤー体験としてうまく落とし込めているかというと、それも疑問で、主人公の部屋にあるアイテムを調べていたら突如トランスジェンダーかどうかの選択肢が出てくるなどの唐突感や、全コンパニオンが種族も性別も関係なくロマンス対象としてしまったのも特徴がなく深みがないと感じる部分です。
ジェンダーに関する話はほぼ一人のキャラクターに集約されており、全体的なストーリーとしては悪くないものの、そこにジェンダーの要素を絡める必要があったのかと思います。
結局、開発側の不必要な特別視と世界的な流れのタイミングの悪さが重なってしまった影響が大きいと感じます。
まとめ
「ドラゴンエイジ」シリーズとしてみるとシステムの刷新だったり、比較的シンプルな表現になってしまった各勢力間や種族の関係性など描き方が足りない部分があるかもしれません。
それでも一本のゲームとしてみるとなかなかの良作です。
DEI関連の出来事が一人歩きしてしまって本作の評価をゆがめてしまってると感じられるのが本当に残念です。