トライアングルストラテジー レビュー
『タクティクス・オウガ』や「ファイナルファンタジー・タクティクス』など往年の名作を受け継ぐシステムとなっているスクウェア・エニックスが送るタクティクスRPG『トライアングルストラテジー』(Amazon)のレビューです。
世界観・ストーリー
資源を発端とした国同士の衝突とそれに絡む人を描いた作品で、魔法という要素はあるものの基本的にはその存在はそれほど重要な要素ではなく、そういう意味ではファンタジー要素はそれほど濃いわけでない世界観ということもあり、王道感はあるものの派手さには欠けるストーリーです。
今作ではマルチエンディングを採用しており、ストーリーの分岐も数箇所で発生するようになっています。
この分岐が本作の特徴のひとつである「信念の天秤」によるもので、投票権を持ったキャラクターの意見の違いを会話をして説得することで自分の進めたい方向に投票させるという仕組みなのですが、要するに会話中に提示される選択肢の中から正しいものを選ぶというだけのものです。(1週目ではマスクデータとなる3つの信念の値も説得の成否に影響が出ます。)
会話の選択肢は、投票前にある「RPGパート」と呼ばれるマップ内を自由に行動できるパートにてNPCと会話することで選択肢が解放されたりということもあり、それほど複雑な仕組みではなく決して新しいシステムではないものの、自分の思い通りに行かない点も含めて、なかなかいいバランスの実装になっていると思います。
また、本作では会話シーンなどカットシーンもすべて戦闘時と同じフィールドで行われるのもあって、HD-2Dによる表現の中で細かいアクションは入れているもののどうしても地味さというものは出てしまっている印象です。幸いイベントシーンなどほとんどの場面でボイスはあるのでまだ見ていられますが、なぜかRPGパートにだけボイスが全くなく、非常に違和感を感じてしまうものとなってしまっています。
テンポ感の悪さなど、UIの問題を感じる場面も
さらに本作では、ワールドマップからイベント選択して進行していく形で、カットシーンのたびにワールドマップからイベントをまた選択するという行動を要求されるというもあり、テンポの悪さを感じてしまいます。
カットシーンの一つ一つも長めに取られているので、ストーリーテリング的には仕方ない部分もありますが、UIによるある程度の改善は可能だったのではないかと感じます。HD-2Dによる演出の地味さが余計に退屈感を出してしまっている印象もあります。
タクティクス(シミュレーション)RPGとしての完成度の高さ
戦闘面に関しては非常にバランス良く仕上がっている印象です。
RPGでもあるので、比較的シンプルなキャラクターの成長要素もあり、戦闘に失敗しても取得した経験値などは残り、キャラクターロストもないので初心者救済策という意味でもよくできていると言えるかと思います。
ただし、戦闘時についてもキャラクターの方向がわかりにくいなど、UIには改善の余地ありと感じます。
「HD-2D」による表現の限界?
自分は、基本的には古いゲームをあまりやりたいとは思わないので、正直なところ、現代的なグラフィックでゲームはプレイしたいと考えています。
何もAAAタイトルのような豪華なリアル感あるグラフィックでなく、デフォルメされた表現でも現代的なグラフィックというのは当サイトでレビューもした『Kena: Bridge of Spirits』のようにあるのではないかと考えてしまいます。
また、ありとあらゆる場面でHD-2Dによる表現を採用したが為に前述の通り、イベントシーンなどで演出面での弱さを感じてしまったり、また、視認性が欠けてしまっている場面もあります。
この表現方法を採用したことでグラフィックに必要なリソースやコストはリアル感あるグラフィックのものよりも格段に下がるというのは理解できますし、グラフィッククオリティを上げればプラットフォームの変更が必要になるかもしれませんし、HD-2Dだからリリースできた(予算的になど)という面もあるんだと思いますが、スクエニほどの会社の作品としてはなんだかさみしいと感じてしまいます。(純粋にHD-2Dの存在意義を単純に現代的なゲーム表現と比較していいのかという点があるのは理解しているつもりの上で)
最後に
戦闘面ではタクティクスRPG初心者への配慮も見られ、またそのバランスもかなりよくできていると言える作品なので、その点は評価できると言えますが、HD-2Dによる演出の限界や、テンポの悪さ、明らかに改善が必要なUIなど問題点も改めて認識させてくれる作品という印象です。
また同じくスクウェア・エニックスからリリース予定の『The DioField Chronicle(ディオフィールド クロニクル)』についても少し期待しています。(体験版もリリース予定とのことです。)
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