ヴァルキリーエリュシオン レビュー
2022年9月から続くスクウェア・エニックスのリリースラッシュの1作品「ヴァルキリーエリュシオン」のレビューです。一応、ヴァルキリーシリーズの最新作となりますが、過去作と異なりアクションゲームとして生まれ変わりました。本作はリブートという立ち位置でもあるので、シンプルに1作品としてレビューします。
ミッションとステージ
本作はミッション・ステージ進行型のゲームとなっており、各ステージは基本的には一本道でリニアな進行となっています。
またステージ進行中、一定ポイントごとに封鎖されるため後戻りできなくなる場合があります。
収集アイテムもあるので、取り忘れるとミッションを始めから終わりまですべてやり直すという非常に面倒な仕様となっています。
全9章、エリア数は5とかなり少なめで、1エリアを除いて2章で1エリアを使用する形となっており、サブクエストでも同じエリアを使用するので、ボリューム・バリエーションとしては明らかに少ないと言えると思います。
ミッションクリア時には最高ランクSまでの評価が表示されます。
グラフィックと素晴らしいキャラモデリング
基本的な各エリアなどのグラフィック・ビジュアルについてはPS5世代の次世代感があるかといわれれば、それはありませんが現代のゲームとしては標準レベルだと思います。
キャラデザインも含めたゲーム内のキャラモデリングについては個人的に非常に高評価な箇所で、基本的にはフォトリアルな方向ではあるのですが、アニメや漫画に見られるような輪郭線があるという独特な表現が採用されています。
主人公ヴァルキリー含めて、全員がかっこよくかわいくモデリングされており、衣装などのデザインも非常に素晴らしいと思っています。
気持ちがいい「ソウルチェイン」と頼もしい仲間となる「エインフェリア」
いわゆるグラップリングフックのことで敵との距離を一気に詰めることができるアクションで、「ソウルチェン」に続けて発動できるアクションも存在します。
最終的に4人仲間となる「エインフェリア」も非常に共闘感が出ていていい感じで、ソウルゲージというゲージを使うものの、同時に複数人召喚することも可能で、ヴァルキリーの能力を解放すれば、特定の条件、例えばヴァルキリーが吹き飛ばされたタイミングで自動召喚などの設定も可能となります。
また、「エインフェリア」にはそれぞれ属性が設定されており、エネミーにも弱点属性が設定されているので召喚することで自分の攻撃にも属性が付与され、弱点属性で攻撃し続けるとブレイクゲージがたまっていき最終的に敵が一定時間動かなくなるブレイク状態にすることが可能です。
アクション
元テクモのTeamNinjaの元メンバーが設立したソレイユ株式会社が開発担当ということでアクション面は結構しっかりしていると考えても問題ないです。
ただし、改善の余地は感じさせる形になっています。
複数の武器
本作ではアクションの基本挙動として、モーションをキャンセルさせるような挙動はおそらくありません。回避やガードのいずれもアクションのモーション中に挙動をキャンセルして発動させることができません。
また本作では、複数の武器が入手できて武器種により異なるアクションも楽しめます。
また特定の武器種が弱点のエネミーもいて、状況により武器を切り替えて使用することも可能なのですが、前述のキャンセルのない基本挙動の影響なのか、武器の切り替えもアクション中は行えません。おそらく移動中以外は一切の切り替えができません。
これが例えばもっとスムーズに武器の切り替えができればコンボの幅がより広がりアクション面も奥深くなったのではと感じます。
アクションに制限を加えてしまったUI
武器の切り替えと消費アイテムを十字キーに割り当てる形になっており、4つあるキーの上と右が武器、左と下が消費アイテムとなっています。
また、特殊技(いわゆる魔法とか)「ディバインアーツ」をR2+□△○×に割り当てる仕様となっています。特殊技は属性魔法となっており、回復も含めて6属性あるのでボタンが足りていません。
また十字キーの割り当てで特に問題なのは枠が固定されている問題で、特に消費アイテムの存在がかなりマイナス要素となってしまっていると言えます。
消費アイテムは体力を回復したり一時的にヴァルキリーを強化したり等の種類が存在するのですが、使用してしまうとミッションクリア時の評価が下がってしまうという仕様になっています。アクションが苦手な方にとっては救済手段となっていると言えるかもしれませんが、自分の場合は評価が下がると気付いてからはひとつも使用しませんでした。使用しなくても最後までクリアできたことを考えると少ない4枠のうち2枠を無駄にしているという状況になります。
これが消費アイテム以外に割り当てができればより快適なプレイが考えられ、残念な仕様と感じてしまいます。
問題を抱えるカメラ挙動
本作のカメラはオブジェクトとの衝突判定があり、このオブジェクトというのが建物の壁やエネミーなども含まれる感じです。よって壁際などに移動すると画面に自キャラクターが表示されていない状況になることも多く、何が起きているのかわからないということが頻発します。またカメラがプレイヤーの操作を無視して強制的に移動することもあるので、余計におかしな状況になることが多くプレイヤーへのストレスの一因となっています。
ボリュームの犠牲になってしまった感のあるストーリー
オーディンの使徒として創造された主人公「ヴァルキリー」が崩壊の進む世界を救うために奔走するという話ではあり、元人間である「エインフェリア」と共に行動することで徐々に人間らしい感情・反応を見せるようになっていくヴァルキリーなどが描かれているのですが、ゲーム自体のボリュームが少ないために描写が突然かつ雑に感じてしまうところもあり評価としてはマイナスといえる部分です。
また「エインフェリア」が人間だった頃のお話しなど細かく設定されているのですが、ゲーム内のいわゆるライブラリ的な実装になってしまっており、サウンドノベルのような形での補足となってしまっています。(サイドクエストでの進行もあるが、結局何を描きたいのか、こちらもボリュームの少なさが悪い方向に出てしまっています。)
カットシーンなど演出面についてはキャラモデリングの良さもあって合格点かなとは思いますが、唯一気になるのがリップシンクで少なくとも日本語のボイスとキャラの口の動きが合っていません。
評価できる箇所もあるがもったいないゲーム
アクション自体は惜しいところもあるものの基本部分はしっかりしており、基本的には高く評価していいと思います。ただし、ボリュームの少なさやその犠牲となっているストーリーテリング、細かな部分での欠けた配慮など明らかな問題を抱えている箇所もあり、そういう部分を重視される方にはおすすめしにくいゲームです。
消費アイテムのような意味不明な実装などもあり、いくらでも広げようのある世界観・ストーリーや一部に問題を抱えるシステム面など、もっと大作、そしてニーアオートマタのような評価にできる要素が散見されるだけにもったいないゲームだと感じてしまいます。
コメント