DioField Chronicle(ディオフィールドクロニクル) レビュー

スクウェア・エニックスの完全新規タイトルとなるシミュレーションRPG「DioField Chronicle(ディオフィールドクロニクル」のレビューです。すでに体験版もリリースされているので、購入前に試して頂くことも可能です。

シミュレーションRPGということだが・・・

公式サイトでは「リアルタイムタクティカルバトル」と記載されています。
その見た目からRTS(リアルタイムストラテジー)感を感じる方も多い方と思いますが、さっくりとした言い方をすれば、RTS風RPGという感じです。

本作はマップからミッションを選択していくステージ型のゲームとなっており、1ミッションあたりの時間はかなり短く、ゲームの最後に至るまで最大4ユニットしか出撃できないので、どうしても戦略面での深さが出ない印象があります。

ミッション選択画面。報酬欄に追加報酬の条件が記載されていますが、このミッションの場合は「4分以内にクリア」となっている。短いものでは2分ほどでクリアできるミッションもある。

また、出撃できるのは各ユニットの隊長とその副官の8名までとなっており、副官を任命することでその副官を担当するキャラクターのスキルが利用できるようになるだけで、ユニット自体のパラメーターに影響が出ることもありません。

部隊の設定画面

スキルは隊長・副官と合わせて最大6個ということになりますが、いずれかひとつのスキルを使用するとすべてのスキルがクールダウンに入るため、どうしても使用するスキルが便利なもの、強いものに限定されがちとなり、いわゆるスキルの性能差がハッキリしている(悪い言い方をすればバランスが酷い)ので余計に限定的な使用となってしまいます。

RPGの面で見ていくと、まずレベルに関しては後で述べさせて頂くとして、次に装備については、キャラクターごとに固定された武器種とアクセサリーとして2枠用意されています。

キャラクターごとに異なるアビリティもあり、同じ武器のキャラクターでも、ここで差別化が図られているが、正直その差は小さく成功しているとは言い難い状況です。

主人公「アンドリアズ」のアビリティ画面。クリアするまでで一番出撃したキャラクターだが、すべてのアビリティを解放できていない。これももったいない仕様だと思います。


スキルは武器に設定されており、武器ごとに最大で3つ、武器種ごとに最大で5〜6種類と多いとは言えない状況です。

スキルツリー。ただし、このツリーはスキルを覚えるものではなく、強化するためのもの。この画面では武器3種分のツリーが表示されている。

バランスがおかしい?

キャラクターの問題

キャラクター自体は最終的に約15人ほど仲間に加えることができますが、出撃できるのは8名まででそれ以外の出撃していないキャラクターには一切経験値が入りません。また、キャラクターの能力差も酷く、大きく分けて、近接アタッカー・遠隔アタッカー・タンク・ヒーラー・キャスター(魔法使い)とカテゴライズできる感じなのですが、まず1例として、近接アタッカーとなる主人公アンドリアズの攻撃力が非常に高く、他キャラクターとはかなり大きく差があります。

また、前述の通り出撃しているキャラクターのみに経験値が入る仕様のため、どうしてもレベル差が出てきて、中盤あたりから各クエストの推奨レベルに近いキャラクターを使うとなるとさらに限定されることになります。クエスト自体は何度でもできるのでいわゆるレベル上げ作業はできるのですが、レベル平均化のための要求回数が非常に多く、今の時代に合っていない仕様に感じます。(おそらくそういう使い方を想定されていないのだとは思います)

貨幣の要求量がおかしい

このゲームには武器やアクセサリーそして魔煌玉と呼ばれるいわゆる召喚獣の強化、武器の開発などありとあらゆる箇所で貨幣が必要となりますが、その取得方法はクエストのクリア報酬のみでその報酬量が少ないために満足な強化がやりにくくなっています。

結局、これも使用キャラクターを限定させる要因のひとつとなっており、せっかく強化のシステムが用意されているのに、それが一部しか利用されることなくクリアしてしまうという事態に陥っています。

ストーリー・世界観

基本的には国家による勢力争いとそれに巻き込まれる人々を描く硬派な物語でキーワード化すれば政治・権力・派閥・宗教という感じとなると思います。
一応モンスターも出てきますが、あくまでもこの世界の生物の1種類というだけで、ストーリー自体に大きく関わるような存在ではありません。

ストーリーテリングについても問題を抱えていて、これは主人公「アンドリアズ」の性格が冷静沈着、非常に頭が切れるキャラクターで彼が率いることになる傭兵団「ブルーフォックス」が大きなピンチを迎えるということがないということも関係あるかもしれませんが、終始、淡々とストーリーが進行していく感じで盛り上がりに欠けています。

ストーリー上いくつかプレイヤーを驚かせるようなものもあるのですが、ストーリー演出がほぼナレーションと静止画による解説か、キャラクターのちょっとした会話程度となっており、雑というべきなのか要するに演出が下手です。

グラフィックのレベルに問題が?

敢えて擁護っぽいものから入れば、本作のステージはジオラマな質感を持たせている(そう見えるかどうかはまた別として)とのことでキャラクターのモデリングも若干フィギュア感があるような印象があります。

ただし、テクスチャなどは細かく描画されている印象ですが、髪や髭、衣装の細かな箇所など明らかにモデリングレベルが低い場所も見られます。

右の女性キャラに注目してみると、髪のモデリングもかなり安っぽいし、服に三角錐がいっぱいついていますが、これはなんでしょう・・・?

また各カットシーンでは会話中に瞬きや口の動きなどはありますが、大きく表情が変化することもなく、どちらかといえばあっさりした性格のキャラクターが多いので余計に演出面に影響が出てしまっている印象です。

意欲作ではあるが、あらゆる面が薄いゲーム

RPGのシステムとしては、新しい仕組みに挑戦した印象は受けますが、RPGとして重要なストーリーは全7章までしかなく(体験版で1章がプレイ可能です。)演出面の弱さもあって印象的に描けているとは言えません。
また、4ユニットしか出撃できなく、スキルのバリエーションも少なめなので、中盤あたりからプレイ感の変化・拡充がありません。

キャラクターは多いものの、一部の性能差は酷く、主要キャラクター以外は存在感が薄かったりとシステム面、ストーリー面ともに問題を抱えています。

本作がインディー作品でそれらしい価格で発売されていたならまだ納得がいく面もあったかもしれませんが、いろいろな要素があるものの、いずれも浅さを感じるシステムとなっており、あらゆる面が薄い内容だとフルプライス(ちょっと安いかもですが)では、おすすめのしようがないというのが正直な感想です。

プレイするにしてもセールなどで安くなったときが買い時だと思います。

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