ELDEN RINGレビュー

すでに1200万本の販売本数を記録するなど話題のフロムソフトウェアおなじみ死にゲーといわれるソウルシリーズ最新作となる「エルデンリング」のレビューです。

エルデンリングとソウルシリーズ

本作のタイトルには「ソウル」という文字がありませんが、その内容は完全に「デモンズソウル」から始まる「ソウルシリーズ」がベースとなっており、2009年に発売となった「デモンズソウル」から脈々と受け継がれてきたシステムをベースにドラマ「ゲーム・オブ・スローンズ」の原作となる「氷と炎の歌」の作者であるジョージ・R・R・マーティンさんと共同で世界観が構築された作品となります。

また、本作はソウルシリーズ初のオープンワールドとなり、この点が良くも悪くもソウルシリーズとしての変化に大きく影響を与えています。

ソウルシリーズとしての正統進化

アクション面については、戦技やガードカウンターが追加され、オープンワールド化に伴ってより自由度の高い探索、しゃがみ等によるステルス、ジャンプの実装や騎乗動物による移動・アクションなどと過去シリーズ最大の広がりと言っても問題ないと思います。

ただし、オープンワールド化は悪い影響も出ていると感じる場面もあります。

素晴らしいビジュアルデザインのオープンワールドとその影響

単純にグラフィックとしては、発売日の近かった「Horizon Forbidden West」(レビューはこちら)には遠く及びません。
ただし、オープンワールド世界を構成するビジュアルデザインは非常に綺麗で、一部に新たなエリアの到達した段階で意図的にそれを見せるようなマップ構造になっている箇所もあり、見応えのある世界の構築には成功しているように感じます。

序盤に攻略することになるストームヴィル城からリエーニエというエリアに到達したときの風景

本作の新要素となるジャンプや騎乗動物「トレント」による2段ジャンプは、オープンワールド化にあたり必須となったと感じます。これはソウルシリーズをベースとしてる影響なのか、キャラクターの移動が高低差にかなり弱くちょっとした段差にも引っ掛かりやすい傾向にあります。これでは、高低差も含めて魅力的なオープンワールド環境の構築は無理だったと思います。

こういう移動面や弱い演出面、壁を貫いてくる敵の意味不明な攻撃など、おそらく根本的なシステムとして古さを感じる場面もあります。

ソウルシリーズとして欠けたバランス

まず、アクティビティやロケーションの増加により、いわゆるコピペ感感じるダンジョンや敵モンスターの使い回し・コンパチモンスターなどが多く見られます。
これ自体はもはやオープンワールドあるあるなので、個人的にはさほど気にしていませんが、敵の配置の悪さというか雑さを感じてしまう場面をいくつか体験しました。狭いエリアにそれなりに大型のボスを配置するなど、これまでのソウルシリーズに感じたステージデザインとそこに配置される敵との絶妙なバランス感が大きく崩れていると感じています。

また、ここまでシリーズを重ねてきたことで少々開発側のやることがエスカレートしてしまっている印象を受ける場面もあり、極端に攻撃力が高いボスや素早い動きで上空に逃げてしまう敵、カメラが追従できないほど素早い動きを見せる敵(正確に記述すれば、カメラは追従しているが早すぎてプレイヤーとしては何が起きているのかさっぱりわからない)など、理不尽さを感じてしまう場面もちょこちょこ存在します。

いくらに死にゲーとは言え、プレイヤーが理不尽さを感じてしまうというのはハッキリと失敗な仕様と言えると思います。理不尽さを感じさせるゲームなんて駄目な開発でも容易に制作できてしまうのではと感じ、パッチなどアップデートで改善される箇所も出てくると思いますがフロムソフトウェアのゲームでは感じたくなかった部分です。

理解がさらに難しくなったストーリーと物足りないUI・メニュー

本作も含めたソウルシリーズでは、プレイヤー側に考察の余地を与えるストーリーテリングとなっており、多くのストーリーがゲーム上では詳細に語られません。
これ自体は否定するつもりはありませんが、ここにもオープンワールド化に伴うプレイヤーの自由度の向上が悪影響となって出てしまっており、各地に存在するNPCから始まる物語が攻略サイト頼みではないとまともに進行しにくいという問題が出ています。NPCによっては、途中少しスキップしたりしても問題なく進むものもありますが、多くの場合プレイヤーにとって理解できない展開となってしまいます。

現在のオープンワールドゲームでは、クエストの目的地にマーカーが配置されたり等プレイヤーの利便性に全振りした仕様が多く見られ、ソウルシリーズでそこまでやってほしいとは全く思いませんが、会話したNPCの履歴のようなログや次に何をすべきかのヒントぐらい確認できるUIがあっても良かったのではと思います。アップデートでNPCのいる場所がMAPにアイコン表示されるようになりましたが、ストーリー進行を手助けできるものではないです。

また、本作の世界観・ストーリーもジョージ・R・R・マーティンさんとの共同制作のおかげもあってか非常に魅力的なものがあるのではと感じています。
ただし、ゲーム内だけではそれを感じにくいというのがもったいないなぁと思っています。
各アイテムのフレーバーテキストやストーリー進行をまとめ、テキストベースでいいのでプレイヤーのストーリーや世界観の理解が少しでも進むような辞典的なものがあればより魅力的な作品として評価されるのではと考えてしまいます。

古く感じるアクション周りのUI・操作

また、本作では多くの魔術・祈祷、アイテムがありますが、その切り替えは未だに十字キーによるローテーション(上または下キーを1回押すごとにひとつずつ使用できるものが切り替わる)というのが、素早い対応を求められるアクションにおいて、いかにも古くさく「これがソウルシリーズのUI」だからでは全く擁護になっていないと感じます。「ソウルライク」というジャンルの元祖だからこその進化を感じさせて欲しいです。

ソウルシリーズ初心者への配慮

新規追加要素となる「遺灰」がまさしくそれに相当するもので、エリア限定とはいえ協力NPCを召還して一緒に戦闘することが可能です。

本来、マルチプレイである金色の協力サインもお助け要素として機能させるものだとは思いますが、これについても説明があっさりしすぎ(というか説明UIの有無の記憶がない)のが前述のUI周り含めて足りていない箇所だなと感じます。

さいごに

驚異的な売上なども考慮するといわゆるゲーマーだけでなく初めてソウルシリーズに触れるという方も多く購入されたゲームだと思います。それだけにもったいない部分も見られるのが残念に感じてしまいますが、それでも非常に面白いゲームなのは間違いありません。プレイしないのはもったいないゲームな一本だと思います。

created by Rinker
フロムソフトウェア
created by Rinker
フロムソフトウェア

コメント

CAPTCHA